
不動産投資のリスク(1)【基礎編】
投資商品を選ぶときは、その投資商品が持ついろいろなリスク(収益のブレ=不確実性があること)を事前に押さえておくことが大事です。不動産投資には、他の投資商品にはない特有のリスクがあります。事前にどんなリスクがあるかを把握し、それを見込んだ上で投資するかどうかの判断をしていく必要があります。
今回は、不動産投資のリスクやデメリットについて3点ほど触れていきます。
市場リスク
不動産投資の収益の源泉となる賃料や不動産の価格は、不動産を取り巻くマーケットの環境(市況)の変化などによって変動することがあります。その結果、不動産投資によって得られるインカムゲインやキャピタルゲインに“ブレ”が生じ、場合によっては収益(リターン)が悪化することがあります。
具体的には、景気が悪化することなどによって、投資対象となるオフィスや住居に対する需要が減り、価格や賃料が下落したり、空室率が上昇したりすることがあります(もちろん、これとは逆のことも起こり得ます)。
後者の借り手(入居者)がいなくなり、家賃収入がなくなることを「空室リスク」といいます。通常、将来にわたってずっと家賃が途切れることなく入ってくる(=常に入居している)ことは考えにくいです。ですから、不動産投資の判断をする際には、空室になってしまう(=家賃収入がなくなる)確率を、ある程度見込んでシミュレーションを立てておく必要があるでしょう。
この空室リスクを避けるために、不動産管理会社が提供する「一括借上」(≒サブリース)といったシステムがあります。このシステムは、入居中・空室に関わらず家賃収入を保証(家賃保証)したり、入居者の募集やトラブルの解決や家賃を滞納している人への対応などの管理業務を行うというものです。家賃収入のうちの一定割合を支払うことなどによって利用することができます。ただし、空室リスクを避けることができる代わりに、家賃収入のうちの一定割合を支払ってしまうため、手取り収入は少なくなり、投資としての利回りは下がってしまいます。
不動産投資は他の投資と比べて、投資家自身の裁量を働かせる余地が大きいことがメリットの一つといえます。不動産投資に期待する収益、投資した物件に家賃保証してもらう必要があるかどうか、保証契約の内容などをよくふまえた上で、このシステムを利用するかどうかを決めた方がよいでしょう。
流動性リスク
現物不動産投資の場合、その投資対象となる不動産は、一般の金融商品に比べて流動性が低い(売ろうと思ってもすぐには売れない)といえます。急にお金が必要になったときには、すぐに現金化できないので注意が必要です。
不動産は、売り買いのコントロールを自分一人で行うことは難しいといえます。取引の相手を見つけることはもちろんのこと、後々トラブルにならないように契約書等を作成すること、代金の決済、所有権移転等の登記の手続きなどについて、すべてを自分で行うことは容易ではありません。また、そもそも不動産の売買等について営利を目的に不特定多数に対して継続的または反復的に行う場合には、宅地建物取引業の免許が必要になるという話もあります。
保有コスト
現物不動産投資の場合、その投資対象となる不動産は保有しているだけで固定資産税・都市計画税(土地および建物に対して)がかかります。その他にも建物維持・管理費用、入居者管理を不動産会社にお願いすれば管理委託費、建物の火災保険料などのコストがかかります。他の投資商品(株式、債券、投資信託等)と比べると割高といえますが、不動産は公共性(限りある国民共通の資産としての側面がある)が高く、事業性が強く投資家の裁量の範囲が広いことからすると致し方ない部分もある気はします。
ただ、投資に際しては、この保有コストを意識することは重要です。