
不動産投資の初心者が知っておきたい税金と節税の基礎知識【税金コラム06】
このコラムは、不動産投資専門税理士の志賀公斗先生に行ったインタビューをもとに作成しております。特に、多くいただくご質問をもとに、志賀先生にお答えいただきました。
税金の知識を学ぶには?
——不動産投資に関する税金の知識はどのように学んだらいいでしょうか?
志賀:税金の難しさはその人によって違うんです。サラリーマンであれば税金がいきなり高いというところから節税という話からスタートしますし、サラリーマン大家さんで収入を増やしている人は、節税一辺倒ではなくて、税金を納めることも大事になってくる。ですので、自分に近い状況の方の書籍やセミナーを受けて、学ぶことが大切です。勘違いしがちなのが、簿記を受けたいからといって、上場企業の会計の決算書を読んでもはっきり言って何の役にも立たないので、自分が必要としている状況に近い本を読む、セミナーに出る事をした方が良いと思います。自分でやらずに税理士さんに丸投げの方は楽は楽ですね。規模の問題なんです。所有している収益物件が1棟ぐらいであれば、すべて自分で見ていてもできるのですが、これが3棟4棟になってくると大家業が忙しくなってくる。
それこそ先ほどの入居率を埋めるとか、募集の際何か特典を付けるとか、修繕の発注をするとか入居者の対応をするとか忙しくなってきて、税金の方に時間を割くことが出来なくなってくる。忙しくなってくるので、税金に関しては税理士に丸投げする方が多くなってきます。税金は自分でやって自分に利益がある事が少ないからです。逆に入居付けは自分が頑張っただけ成果が出ますので、もちろん力が余ってる方は勉強をしていただきたいのですけど、税金というのは税理士の僕が言うのもあれですけど、優先順位は一番ではないんですよね。優先順位が一番なのは賃貸事業を一番で回す事なので、余力があれば税金の事も勉強して頂きたいなと思っています。
確定申告について
——青色申告をしたいのですが、本などを見て自分で勝手に進めて大丈夫でしょうか。税務署から何か言われないか心配です。
志賀:確定申告は自分でつけた帳簿から決算書と申告書を作成して提出します。しかし、帳簿自体を税務署に出すわけではありません。もちろん、帳簿や領収書は申告をしてから7年間の保存義務があるので、調査が来た際に、帳簿を見せて下さい、というのがあるんです。決算書と照らし合わせながら帳簿を見るので、そのときにきちんと複式簿記で記帳されていないと問題が起きるわけです。ただし、調査をしないかぎり、税務署はどのような帳簿で決算書が出来上がっているかは知りようがないのです。自分でやって心配であれば、最後に税理士に見てもらうというのもありです。または、青色申告会という青色申告の手続きをフォローしている団体もあるので、格安で申告の時に帳簿を見て頂く時もあると思います。ご心配であればそういった方々に見てもらうのが一番だと思います。
——青色申告の事業的規模について教えて下さい。形式基準5棟10室に満たないのですが、65万控除にして申告するとやっぱり指摘が来るでしょうか?
志賀:きます。前述したように税務署に出すのはあくまでも決算書と申告書だけ。ただし、決算書と申告書の中で明らかにおかしいところは指摘されます。形式基準を満たしているかどうかというのは、申告書にはっきり書いてありますから、わかっちゃうんです。だから税務署の職員がペラペラめくって、あれこの人、形式基準を満たしていないのに65万円控除を受けているというのはわかるので指摘されますね。
——物件の視察費用は、実際に購入した物件の視察でないと経費計上できない、と聞いたことがあります。実際にはその何倍もの物件を見て回るので、費用はかなり大きくなります。これらの費用は本当に経費計上できないのでしょうか?
志賀:事業的規模であるかどうかで変わってきます。事業的規模でない場合は、その収入を得るために費用した額が経費になる。これが法律上、決められている。そうすると買わなかった物件の費用に関しては、その収入を得るために要した費用の額ではなくなってくる。収入があるわけではないので、これは経費計上できない、という考え方があるわけです。これに対して事業になると、その事業のために必要だった経費の額は経費になりますよ、という考えになるわけで、そうすると購入していなくても、不動産事業として見に行っているだけで、経費になるという形になります。よく初心者の方であるのですが、不動産所得がゼロで物件の視察で100万円使っているから、これを経費にして赤字申告をして還付しようと考えている方がいらっしゃるのですが、事業になっていないので、できないということになります。もちろん、不動産関連の高額のセミナーなども経費にすることはできないので注意しましょう。
——法人名義で不動産投資をしています。不動産投資に関連する支出をしたのですが、間違って個人で領収書を起こされてしまいました。この場合、法人名に訂正をしてもらった方がよいでしょうか。同様に、領収書に上様で名前を書かれてしまいました。これらもレシートから領収書をつくってもらわないと経費として認められないのでしょうか?
志賀:ポイントは、領収書のあて名については副次的なものに過ぎないということです。税務署が見ているのは金額と日付と何のために使ったか、この三点ですね。この三点が重要なのであって、上様でも空欄でも経費にならないことはありません。ただ、税務署の方でちょっと怪しい支出だと疑われた場合、会社名でもらっている方が、税務署に対して言い訳が立つということです。ですので、レシートでも全く構わないんです。領収書に品代としてと書かれてしまうと、何買ったか分からない。逆にレシートの方が領収書よりも内訳が書かれているので、レシートのほうが証拠として役に立つことがあります。
たとえば、百貨店で掃除をするために箒を買いました。その際、上様、お品代としてと書かれてしまうと、本当に物件を買うための箒を買ったのか、それとも奥さんが洋服を買って領収書にしたのか分からない。レシートには箒とか出ますので、むしろレシートの方が好ましいケースもあります。逆にホントは経費じゃないモノを経費にしたいという方は、誤魔化すために領収書にしますよね。なので、領収書のあて名は全く他人でなければ、法人名義でも個人名義でも、上様でも、空欄でも構わない、ということになります。
——クレジット払いはどのように対応すべきでしょうか?
志賀:クレジット払いについてですが、ネットショッピングなどで、領収書が出ない場合も質問があるのですが、このときにも税務署は領収書でなくても、日付、金額、何に使ったか、これさえ分かれば構いません。クレジットであれば明細が毎回ありますが、クレジット明細を保管しておきます。ネットショッピングであれば、印刷画面を保存して領収書代わりにするといった形をすれば、領収書でなくても問題なく経費計上は可能です。結構、領収書も3万円を超えたら印紙を貼らなければいけないとか、領収書を出したくないというネットショッピング店も結構あるんです。意外と多く出ないというケースも聞きますね。
——家賃や光熱費の家事関連費の按分計上について知りたいです。賃貸で家賃15万円ですが、家賃を事務所経費として計上するのは難しいでしょうか。まるまるは無理でも何割くらいなら計上されやすいでしょうか。それとも厳格に詳しく計上すべきでしょうか?
志賀:原則としては厳格に詳しく、事務所として活用している部屋の面積で割って、事業と居住の割合を分ける必要があります。また、青色申告と白色申告で扱いが変わります。事業経費に出来る部分に関しては、まず白色申告はできません。事業と家事に関連する費用を家事関連費といいますが、家事関連費は白色申告について経費計上はできません。青色申告者であっても、家事関連経費のうち、事業に関する区分で明確に説明できる部分を経費計上するということになっています。つまり、明確に自分で区分しなくてはいけないんですよね。そうすると、事業と面積を区分けして区分しなくてはいけない。ただ実際は皆さんそこまでやるのは面倒なので、3割くらい経費にする方が多いと思うのですが、基本的に自宅の半分以上が事業の面積とは考えられないので、半分も付けると付け過ぎかなと思います。
——賃貸の名義は、個人で契約する場合と法人で契約する場合で、違いがありますか?
志賀:法人の場合は社宅の扱いで出来ますので、社宅の要件は色々細かいところもあるんですが、それを満たせば経費計上が出来るのかなと思います。逆に法人名義にしておかないと、それは社宅ではないとみなされてしまうので、経費に出来ないケースもあります。
質:それでいうと、設営という観点で言えば、一応社宅と言う名義でいいという事ですね。
——フリーレントはどのように経理処理するものでしょうか。空室を埋めるために1か月分をフリーレントにしたのですが、この場合、収入がなかったことになるのか、それとも、収入として計上して経費で相殺する方が正しいのでしょうか?
志賀:これは完全に収入がなかったことになるので、売り上げから除外して頂けたら大丈夫です。単純に収入がないという形で処理をするということですね。
——顧問税理士や不動産仲介業者とよくゴルフに行きます。この場合、ゴルフの経費は経費計上できますか?
志賀:相手が顧問税理士であれば経費にすることは問題ありませんので、ただ行ったという事は何かしら証明できた方がいいでしょう。プレイ履歴などの書類を保管していただいて、今日は仲間内で遊びに行ったんじゃなくて、不動産業者と接待だということを客観的に証明してください。ゴルフの相手が顧問弁護士とか不動産業者だとか不動産投資と関連しているのであれば問題はありません。しかし、投資家仲間と一緒にゴルフに行って不動産の話をしたということであれば、接待として認められず税務署から否認される場合があります。逆に投資家仲間とゴルフに行って経費にしたいのであれば、ゴルフのプレーだけではなくて、そこで投資情報の会議をする。きちんと会議の議事録を作っておくことが重要です。投資家仲間とゴルフに行って親睦を深めただけだと、経費として認められるのは難しいでしょう。
デッドクロスにどのように対応するか?
——中古物件の購入を検討しているのですが、シミュレーションをしていると、いわゆるデッドクロスが早々にやってきてしまいます。不動産投資の本を読んで、デットクロスがとても恐ろしい現象だと思っているのですが、どのような対策をすればデッドクロスを回避できるでしょうか?
志賀:デットクロスとは、税金の計算上の利益とお金の流れを比較して、キャッシュフローよりも税金上の利益が出てしまうことになります。実際にはキャッシュフローが100万円しかないのに、税金の計算上の利益が400万出てしまうケースを考えてみましょう。
税金の計算上の利益が400万円になると、税率が一番高い200万円ぐらいがかかります。キャッシュフローが100万円しかないのに、税金が200万円かかってしまう状況が続くと、当然、資金繰りが厳しくなってきます。いわゆる黒字倒産です。基本的にはデッドクロスになってもお金をきちんと残しておけば、資金繰りに困るということはありません。
デッドクロスの原因は、2つあります。ひとつは、減価償却費用が年を経るごとに少なくなるということです。建物だけを定額法でずっと償却している方は、減価償却費が法定耐用年数の期間ずっと一定なので減価償却費だけが減るということはありません。ところが、投資家の多くは、購入したときの経費をなるべく計上するために、物件の建物と設備を分けて計算して、設備の方を定率法で計算している方が多いと思います。私のお客様も8割は設備を定率法で償却しています。定率法ですと、最初は減価償却費が高額なのですが、だんだん減っていくことになります。減価償却費が減るということは、必要経費になる金額が減るということになって、税金が高くなるというのが原因のひとつです。
もうひとつのデッドクロスになる原因が返済にあります。多くの投資家の方が元利均等返済の方法でローンを返済していますが、元利均等返済の場合は、支払当初は利息の部分が大きいという特徴があります。利息は全部経費になりますから経費の部分が大きいので経費計上できる部分が大きい。しかし、年々、利息の割合が減ってきて元金の割合が多くなる。元金は経費に計上することはできませんから、返済額が同じでも税金が高くなるということになり、デッドクロスになるということになります。
——デッドクロスを回避する方法はどのようなものがありますか?
デッドクロスを回避する方法としては、接待交際費や旅費交通費を増やすという方法ではなくて、お金を使わずに経費にできる項目を増やすことです。お金を使わずに経費を作る方法はいくつかあるんですけど、一番有名なのは青色申告特別控除になります。10万円控除や65万円控除を行う。お金を使わずに不動産所得から10万円もしくは65万円を控除してもらう方法です。不動産投資が事業的規模であれば、青色申告専従者給与を活用して、ご家族にお給料を出す。お給料を出すといっても、家族の所にいくだけですから、また戻してもらえばいいだけの話です。そのようなお金を使わない節税策を組み合わせることで、デッドクロスを回避できます。減価償却費用を定率法で計上している方は、定額法で計算している方よりも早く到来するので注意したいところではあります。ただ、デッドクロスになったら、すぐに倒産するわけではないので、あまりご心配なくていいかと思います。
——また、減価償却についての悩みなのですが、建物本体と設備の割合を工夫して、定率法で大きく減価償却費用を計上したいのですが、顧問の税理士が、そんな事は出来ないと言って反対しています。ちなみに建物と土地の割合は7:3で、建物本体と設備の割合を8:2にしたいと思っています。築23年のRC物件です。エレベーターはありません。売買契約書では、建物と土地の割合は記載されていません。顧問税理士が言うように、建物と設備の割合は概算ではダメなのでしょうか?
志賀:そうですね。法律的にはダメですね。法律的に言えば、建物と設備が明確に区分できない場合は、設備自体を取ってはいけないとありますので、この顧問税理士の言っていることは法律上では非常に正しいです。ただ、馬鹿正直にやってしまうと、税金が高いのも事実なので、どこまでグレーゾーンをやるかという事ですね。特にご年配の税理士の方は、税務署と揉めないことが仕事だと考えている方も多いので、少しでもグレーな事をやりたくないと考える税理士も多いことは確かです。仲介に入った不動産会社が契約書に、建物がいくらで設備がいくらで土地がいくらと、契約書に書いてくれれば問題はないのですが実際にはそういうことはほとんどありません。中古の収益物件で詳細を書くということはまずありません。これを見込みでとること自体が非常にグレーゾーンです。
これを顧問の税理士さんに、設備なら皆、取っているんだからいいのではというと、喧嘩の元になりますから、自分に合わないのであれば、税理士さんを変えて頂くしかないと思います。
——仮に税理士さんの制止を振り切って、例えば建物7:土地3の割合で出した時に、税務署からお尋ねが来た場合は、大家さんが説明するのでしょうか?
志賀:そうなんです。最高裁判決が出ていまして、土地と建物が契約書に記載されていない場合、固定資産税の評価額で試算しなさい、それが一番合理的ですと判決が出ていますので、税務署からお尋ねが来たら最高裁判決を前提に訂正を迫られます。
——最高裁の判決と異なる根拠を見つけ出してきて、税務署と交渉する人もいるのでしょうか?
志賀:もちろん、きちんと根拠があれば問題はありません。たとえば不動産鑑定士に鑑定を出してもらって、金額の割合で出しましたとか、そういう根拠があればいいんですけど、やっぱり根拠のないものは非常に厳しいです。あとは根拠があっても極端なモノは認められません。たとえば、路線価で土地を全部建物にしました。その結果、建物が8、土地が2になっちゃったとか、そういう極端な例になってしまうのは通らないと思います。よく建物を再調達価格で計算して、1億円の物件の建物の価格が9999万円で土地が1万円という結果にもなりかねませんからね。これはもちろん、税務署から否認されます。税務署が一番頼りにしてくるのが判決なので、まず固定資産税評価額でいくらになるのかを試算してもらって、他の方法を取るのであれば、固定資産税評価額からどれくらい、かい離しているかを計算してほしいですね。かい離が大きいと税務署から必ず指摘されます。
——もうひとつ質問です。築古木造物件を購入検討中で、建物の割合が高くなるように契約書に記載してもらいたいのですが、売り主が了承してくれません。打診しているのは、建物8:土地2です。固定資産税評価額では、逆の建物2:土地8です。売り主は消費税課税事業者ではないので、特段不利になるようなことはないと思うのですが、実際、売り主に何か影響はあるものでしょうか?
志賀:これは非常に難しい問題ですね。消費税の問題が一つありますけど、今回は免税が非課税事業者という前提ですね。もしかしたら、地主さんは土地に関して譲渡所得の特例を受けている場合があるんですよね。その土地だけが受けられる特例って結構あるんです。なので、売主にとっては土地の割合が多いほうが望ましい場合もかなりあります。一方、買主は建物が多いほうが望ましい。さらに不動産会社が上場企業の場合は、コンプライアンス上の問題で税務署と揉めないように、固定資産税の評価額で、契約書に明記しますと、仲介業者から言われて変えられなくなることもあります。
——買い主の意向を受けて、建物と土地の割合を工夫した場合に、売主に税務調査が入って何か影響が出てしまう事とかありますか?
志賀:売主側には影響はないと思いますが、当然、売主側に反面調査という形で入ることもあります。反面調査でご迷惑が掛かることもあるかもしれません。
個人事業にするか、それとも法人にするか?
——個人と法人、どちらで事業をするかで悩んでいます。年収450万ですが、いくらくらいの年収であれば法人のほうがよいでしょうか。年収800~900万と聞いたことがあるのですが、実際にはどうなんでしょうか?
志賀:個人としての税金と法人としての税金、どっちの方が高いかで決めていただければと思います。皆さんの税金というのは、確定申告されている方であれば、確定申告書の右上に課税所得金額があります。ここを見ていただいて、まだ確定申告されていない方であれば、源泉徴収票の真ん中に4つ大きな金額があります。支給総額と給与所得総額の金額。給与所得後の金額。所得控除の合計額。それから源泉徴収税額。4つの金額が皆さんの源泉徴収票に書いてあると思うんですけど、この左側の給与所得後の金額から所得控除の金額を引いた額の合計額が皆さんの課税所得金額となります。
これをまず計算して頂いて、国税庁のホームページに検索すると所得税の税率が出てきます。これに住民税が一律10%上乗せされるので、上乗せされたら個人の金額でいくら税金がかかっているのか見ていただきたい。法人税の最高税率は所得が800万円以下で22~23%ぐらいです。個人で22%を超えるようであれば、法人の方が有利。逆に22%を下回っていれば、個人の方が有利となります。これは家族構成とか収入状況で変わってきてしまうので、一律では計算できません。
ざっくりした話をしていきますと、給料年収で約800万円を超えると法人が有利だと思います。後は法人自体が不動産を持つかどうか、所有管理法人になるのか、個人で不動産を持つのかで変わってきます。この話は信頼できる税理士に相談した方が良いと思います。
——法人名義で不動産を購入しようと考えています。合同会社と株式会社、どちらが良いでしょうか?
志賀:現状は合同会社がオススメです。まず合同と株式で会社を作る費用として10万くらい差があります。また、株式会社の場合は10年に一度役員を変更しなくてはいけない。同じ方が役員になることもできるんですけど、変更という手続きになります。登記をしなければいけないので、変更にもお金がかかります。合同会社と比べて、イニシャルコストとランニングコストが高くなるのを負担できるのであれば、株式でも構わないと思います。
合同会社が初めて導入された頃は、よくわからない会社組織だったので銀行融資がマイナスになるなどの噂がなされていましたが、導入されてかなり時間も経ちましたので、金融機関も合同会社だから貸さないということはなくなってきました。
私は費用面から合同会社の方が良いと考えております。ただ不動産用の名刺を作った時に、合同会社の代表社員と株式会社の代表取締役で見栄えが違うので、不動産事業を拡大していきたいとか、将来的にはセミナー講師をやりたいとか、コンサルタントに転身したいとか、不動産の仲介に手を出したいとか、対外的な業務をやっていきたいというのであれば、肩書のために株式会社にするというのがあると思います。大家さんの中には、見栄えのために株式会社にする方もいます。
——法人を活用して不動産投資をしたいのですが、法人の維持費は年間、どの程度かかるものでしょうか?
志賀:法人の具体的な維持費は税理士費用です。税理士への会計費用と年間最低7万円の法人住民税がかかってきます。これは赤字の法人でも均等割で必ず支払わなければならない金額です。ただ、これも物件を持たず不動産の管理だけをやる管理法人と法人で不動産を所有する所有法人で大分金額が変わってきますが、だいたい安く見積もって最低でも毎年10万円ぐらいはかかるでしょう。区分を少し所有しているとか、管理会社で管理費用とか取らないでも年間10万円くらいはかかります。不動産所有法人になると最低でも年間20~30万掛かってくると思います。