
不動産投資の初心者が知っておきたい不動産投資ブームと相場の変動 【税金コラム01】
このコラムは、不動産投資専門税理士の志賀公斗先生に行ったインタビューをもとに作成しております。
過熱する不動産投資のブームとは!?
——現在の不動産投資のブームについて教えて下さい。
志賀:不動産投資についていろいろな議論がありますけれども、不動産投資がブームであるというのは、間違いありません。2014年7月27日発行の日経ヴェリタスでは、賃貸用の不動産を所有して所得を得ている個人は全国で約320万人。日本の個人投資家は1200万人いるそうですから、4人に一人は不動産投資を何らかのカタチで経験したことがあるということだと思います。特にサラリーマンをやりながら不動産のオーナーになるというサラリーマン大家さんの数は確実に増えていますね。直近のブームは2011年でしたから、3年前と比べると、あくまでも私の実感ですが5倍から10倍ぐらいは増えているのではないかと思っています。
——5倍から10倍というのは、すごい増え方ですね。
志賀:そうですね。背景には将来に対する不安が大きいと思います。年功序列制度が崩壊していくなかで、将来、今までの水準通りの給料をもらえないかもしれない。年金もどうなるかわからないという人が増えて、副業をやる人は増えましたよね。ところが、投資といっても、安定的に儲かるものがない。不動産投資家のなかには、株式投資を経験している人がたくさんいるんですが、株式投資や外貨証拠金取引(FX)は大きく儲かる分だけ、大きく損することも多くて、安定して利益が出せない。しかも、FXは常に見続けていないと、売買のタイミングを逃してしまう。だから、ある程度、ほったからしにしても安定収入を生み出せる不動産投資に魅力を感じたという人も少なくないですからね。そうはいってもほんの数年前までは、不動産投資ができる人というのは限られていたんです。なぜかというと、金融機関がお金を貸してくれなかったからです。ところが、アベノミクスの影響で金融機関が積極的にお金を貸してくれるようになった。一番の問題であった投資資金の問題が解消されたので、不動産投資家の人数が大きく増えたということなんですね。
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不動産の価格が上がっている
——でも、不動産の価格が上がると、投資を始めるにしてもなかなか購入できないケースもありそうですね。
志賀:確かに、2008年に起きたリーマンショック後から2015年までの短期的に見ると、不動産の価格は上がっています。現在、成功者としていろいろな書籍やセミナーをされているサラリーマン投資家の多くは、リーマンショックの少し前あたりからスタートしています。そのときよりは、1.5倍ぐらい価格が上がっているんです。だから、そうした成功者がやってきた相場観とは大分状況が変わっています。不動産の価格を押し上げているのが、前述もしているサラリーマン大家さん。そして、外国人投資家、不動産のキャピタルゲインを狙っている富裕層。こうした買い手が増えることによって、不動産価格がじりじりと上がっているんですね。サラリーマン大家さんを取り巻く投資環境は必ずしもよいわけではないんです。たとえば、サラリーマン大家さんで多額の現金を持っている人は、ほとんどいませんが、外国人投資家や富裕層は現金で収益物件を購入します。不動産会社も外国人投資家や富裕層を相手にしたほうが、楽ですからそちらを優先しがちです。だから、ライバルが多いということがいえますね。
コンサルタントの逮捕
——不動産投資というと、収益を上げるだけではなくて、節税にも効果があるということも言われていますよね。
志賀:それは、不動産所得と給与所得の損益通算の話ですね。それに関しては、ちょっとしたエピソードがあるので、ここで紹介しておきましょう。以前、ある節税コンサルタントが逮捕されました。このコンサルタントがやっていたことは不動産投資ではないのですが、赤字の事業所得と黒字の給与所得を合算して、損益通算を行って、給与所得の高所得者が税金を払わなくて済む方法を紹介していました。ちなみに、損益通算というのは、給与所得を含めた総所得金額から損失を出してしまった所得分を差し引くことができるという制度です。損失した所得の赤字分が給与所得の黒字分よりも上回っていたりすれば、税金が掛からないぐらいの低所得にすることができる、というわけですが、そのコンサルタントは逮捕されました。理由は事業に使っていない経費まで計上して、無理矢理、事業所得を赤字にしていたからです。このコンサルタントの手法を知って知らずか、損益通算の制度を悪用することで、税金を減らそうとする不動産投資家が増えて来たんですね。以前は、不動産所得が赤字でも税務署が確定申告書を細かくチェックするということは、あまりなかったのですが、最近では脱税を見つけるために不動産所得が赤字であれば、すべてチェックされるとのことですから、注意が必要です。
サラリーマン大家さんの会合でよく聞くのが、不動産収入を得るための経費計上の話です。不動産収入に関係ない経費でも、申告してしまえば意外と通るということを自慢のように話す方もいらっしゃいます。しかし、事業に関係のない経費を計上することは本来、脱税です。よくあるのが、ご家族との飲食を経費にしたりすることです。以前は何も言われなかったのに、こうした細かい経費までも税務署の目が光るようになってきたというのが、ここ最近の不動産投資の税金関係のトピックになります。
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市場は売り手市場に大きくシフトしている
——そうした動きを踏まえて、不動産投資の投資環境をどう見ていますか?
志賀:ここ数年のトレンドは、第1にアベノミクスの影響で金融機関の融資体制が大きく緩和されて来たということ。そして、それによって売り手市場が進んで、不動産価格が上昇してきた。最後に、不動産投資家が増えることで税務署の目が厳しくなってきた、というところでしょうね。リーマンショックの頃は買い手市場だったので、市場には物件がたくさんあったんです。ところが、金融機関が融資を渋っていたのでサラリーマン大家さんは買いたくても買えなかったんですね。今は金融機関が融資したがっているのですが、市場に物件がない状態。あっても高くてなかなか手を出せない状況になっています。そうはいっても、コンプライアンスは厳しくなっているので、都市銀行や地方銀行などでは、容積率や建ぺい率オーバーといった既存不適格物件や再建築不可物件、耐用年数オーバーの物件などは、書類の状態で審査の対象にはなっていません。
——なるほど。審査の対象にならない物件というのは、具体的にいうと、どういうものですか?
たとえば、耐用年数オーバーの話では、鉄筋鉄骨造(RC造)では、法定耐用年数が47年と決められています。仮に物件が築20年のものであれば、融資期間は最大で27年設定することができます。築22年までであれば、期間の問題から融資を引きやすいと思いますが、それ以上の物件になると、融資を引き出しにくくなっています。新規の融資よりも、借り換えのほうが金融機関は喜びます。なぜならば、他の金融機関も融資できるレベルだと思っているからでしょう。ノンバンク系から地銀への借り換えは、法定耐用年数が残っているのであれば基本的に問題がありません。一方でノンバンク系の金融機関は法定耐用年数は30年の物件が多いので借り換えしにくい状態になっています。
——なかなか厳しい状況ですね。
とはいっても、個別に無理が利くケースもあります。たとえば、一部上場の社員であったりすれば、条件が緩和されることもあります。また、金融機関の個々の事情もあると思います。決算前でどうしても売上が欲しいという場合は、耐用年数がオーバーしている物件であっても、融資が通りやすくなることもあります。
——個人投資家の方は、この状況をどのように見ているのですか?
志賀:完全に様子見する投資家と1日でも早く買おうという投資家のどちらかですね。私のお客様でも、大きくその2パターンに分かれます。完全に様子見に徹する人は、日本の人口減少などもあって不動産は10年、20年という長いスパンで見たら下がると思っている人です。一方、1日でも早く買うという人は、アベノミクスや東京オリンピックといった短期間で見た好材料を前提に購入の判断をしていると思います。確かに、金融緩和やオリンピックといった材料で不動産価格は今後も上昇するというのが一般的な見方になっていますから、彼らの言い分も分からなくはないですね。ただし、現時点で不動産が高くていい物件がないと思っている人は、3年~5年は買えないと思ったほうがいいでしょう。それゆえ、給料のあるうちにしか物件を購入できないという人は、早めに買ったほうがいいかもしれませんね。
オリンピック効果は不動産にどう影響する?
——ところで、オリンピック効果というのは、本当にあるんですか?
志賀:オリンピックは賃貸市場には影響はほとんどないと思います。不動産市況に影響するものがあるとしたら、建築需要が増えることで建築資材の需要が大きく増えるというのと、建築需要に伴って建築に関わる人員が不足するということです。ただでさえ復興支援で資材や人員が不足しているところへ、オリンピックの建築需要が増え、新築の不動産価格が上昇します。新築が割高で買えないということになれば、中古市場に買いたい人が流れ込む。現在、市場は売り手市場ですから、さらに不動産価格が上昇する、という流れですね。サラリーマンが不動産投資で副業をしたいという需要が潜在的にあって、その潜在需要がアベノミクスという金融緩和で掘り起こされ、消費税上昇の駆け込み需要もあってさらに需要が増えた。相続税も上がりましたから税金対策で不動産を購入する人も増えている。こういう背景があって、右肩上がりの短期市場が出来上がっている感じですね。
——なるほどですね。
志賀:不動産投資できちんと利益を残すには、入口がとても重要なんです。高値で購入すれば、ローンの返済も大変ですし、出口戦略も模索しにくい。だから、指値で安く購入するというのが、リーマンショック前の不動産投資の成功のセオリーだったんです。ところが前述しているように、完全に売り手市場になってしまったので、指値で安く買うことができなくなってしまった。指値で安く買おうとすると不動産会社から相手にされません。それだけではなく、不動産会社とのパイプすら失ってしまいます。そうすると、本当に掘り出し物の物件が出てきても買えないということになります。
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